遠い異国からの研修生
一月二十七日の日経新聞一面に「外国人労働者、初の百万人」という見出しで記事が掲載されていました。日本で働く外国人の数が4年連続で増え、2016年に初めて百万人を超えたことが分かったというものです。アジアを中心に「技能実習制度」を通じた人材や留学生、高度人材などが順調に増えているようです。国は労働力の確保に加え先端技術などを取り込むために外国からの人材の受け入れを重視して、今後も外国人労働者は増え続けると見ています。「技能実習制度」とは、発展途上国との技術協力や国際貢献を目的に、日本の労働現場で外国人労働者を実習生として受け入れる制度です。一九九三年に創設され、農林漁や建設など特定の仕事を学ぶ外国人に「技能実習」の在留資格を与え、現行制度では最長三年の滞在を認めています。先の臨時国会では最長五年まで延ばすことができる「外国人技能実習適正実施法」が成立しています。
私たち大山町農協も、この制度を活用して昨年四月より十五名の若いベトナム人女性を技能実習生として受け入れ、えのき茸の栽培施設、都築工場で栽培や収穫、包装作業をしながら研修に励んでもらっています。今年も更に三名の実習生が加わります。来年も受入れの計画をしていますので総勢二十名の技能実習生となる予定です。場合によっては更に増えることも検討しています。
今回十五名の実習生の中で一番若い人は十八歳、そして年長者は三十二歳です。彼女たちの中には小さな子供さんを留守家族に託して後ろ髪を引かれる思いで泣きの涙で来られている方も三名います。聞くところによれば受け入れ先によっては違法な長時間労働をさせたり、劣悪な職場環境であったり、粗末な宿泊施設といったこともあるようです。私たちは遠くの国から恵まれない環境の下で希望を抱いてやって来られた方々が安心して働き、実習と勉強ができて、やすらぎの心が充分に持てるようにと約五十坪の宿泊研修棟を新築しました。
そこで自炊しながら共同生活をし、研修作業をして頂いています。農協職員も彼女たちの為に気配りをして、何か祭りの行事等があれば誘って一緒に楽しんでくれています。たとえば別府市にある農協の別荘、「農民憩の家 喜運荘」への招待や温泉地獄めぐりをして慰労懇親を深めたり、日田市川開き観光祭へ案内し、夜の花火大会を楽しんだりもしました。また、6月の農協通常総会が終わった後には役職員合同で来日歓迎会も行ないました。昨年の秋、十月三十日(日)には、「木の花ガルテン五馬媛の里」に福岡市や大分市の都市で生活する家族や若いカップルなど約百五十名が来られて、素晴らしい秋晴れの好天下で古代米の収穫祭を行ないましたが、そこに彼女たちも参加して稲刈りを体験しました。終了後も参加者全員で「庄屋の館」の下まで歩き、桜園での食事会を楽しんでもらいました。年が明けて、一月六日の夜には、農協で働く人たち約130名が本所2階ホールに集い、彼女たちを招いて新年互礼会パーティーです。そこでは、皆でベトナムの歌も合唱しました。
十五名の実習生の中に今年、成人を迎える女性が三名いましたので、職員が気を効かせて美しい振袖の着物を着付けして一月八日の日田市主催の成人式に実習生全員で出席して日本の古式儀礼を体験してもらい大喜びで写真に納まっていました。
このように遠い故郷の国に愛する家族を残し、単身で遠く知らない他国の山村に来て実習とはいえ慣れない気候や習慣の下で作業や生活をしなければならない若い彼女らに不安が無いはずもありません。そのような研修生の心を察して、いろいろな励まし、気配りと配慮をしてくれる職員に感謝せずにはいられません。
どうぞ皆さん方も彼女達に出会うことがありましたら、やさしく声をかけて下さい。心地好い思い出を、ひとつでも多く持ち帰ってくれることを願っています。

15名のベトナム人実習生