大分大山町農業協同組合 組合長 矢羽田正豪

 3月29日(月)の定例理事会の議案審議がすべて終了した時点で、矢幡欣治組合長より、辞任届が提出されました。

 その理由は、昨年4月からの公正取引委員会の立入検査にはじまり、12月に出されました独占禁止法違反による排除措置命令の責任をとるという事と、自身の健康上の理由を上げられました。健康上の理由は別として、この独占禁止法の排除措置命令について少し考えてみたいと思います。

 40数年前の大山は、日本一貧乏な村であったと思います。それは、「耕地に恵まれず、立地に恵まれず、天然資源に恵まれず、交通の便にも恵まれず、人材にも恵まれず」とすべての面に問題をかかえ、後進途上村ではなかったのではないでしょうか。

そうした中、昭和36年から強力なリーダーのもとに、田んぼに梅を植えましょう、畑に栗を植えましょうという大きな夢を描いたムラおこし運動が始まりました。

 大山でも多くの農民が、この運動に夢や希望を持ち始めたのですが、すぐには収入へと結びつきはしません。

 当時、日本経済は昭和39年の東京オリンピックを境にして、高度経済成長期に突入していきました。皆が疲れ、諦めが出始めた頃、梅と栗のムラおこしをはじめてから12年後の昭和47年、矢幡欣治氏(当時32歳)らにより、施設を利用したえのき茸の周年ビン栽培が導入されました。

 農協でも同じようにその1年後に、有限会社開発原料を設立して米の保管用の廃倉庫を改造して、しめじ茸の周年ビン栽培に取組みました。その時、私は農協より初代工場長として派遣され、未知のしめじ栽培に取組むことになりました。

 2年間は失敗の連続で、「詰め込んでは捨て、詰め込んでは捨て」を繰り返し大赤字をつくり、農協本体の経営危機までささやかれたものです。

 「きのこ」の創業期については、機会を得て別途に語りたいと思います。

 そうして、菌茸類の毎日出荷が始まってからは、大山の快進撃が続きます。トラックの上積荷で少量の物でも何でも市場に出荷することができるようになったのです。

少量生産、多品目栽培、高付加価値販売のはじまりです。

 最盛期の平成5年は、菌茸類の売上高は18億円、農産品全体では26億円の売上げです。この頃は加工、外商事業も好調で大山の全盛期といえるでしょう。

 しかしながら、卸売市場法の改正、小売流通業の価格決定権の増大等で流通が大きく変りつつありました。そうなると、小規模生産農家は弱いものです。そのような弱い立場の生産者が、どの農産品でも自分たちで価格を決め、出荷販売のできる場所とシステム、又高齢者の方々の生き甲斐づくりとして、平成2年に全国に先駆けて立ち上げたのが、農業者によるバザール「木の花ガルテン」という直販所でした。小規模生産農家や弱い立場の人たちにとって、協同体としての意識や団結が失われた場合、この厳しい状況の中では生き残ることは困難なことだと思います。

 しかし、公正取引委員会には、今回の一連の調査の中で私たちの信念や願いは通じず又理解もされず、誠に残念な思いでいっぱいです。これが公正な取引委員会なのでしょうか?。ほんとうに独占禁止法に触れるのでしょうか?。私自身、何度も何度も自問自答を繰り返しました。

今回、公正取引委員会の独占禁止法に触れるとされた理由は、ブランド力もあり8店舗を展開し、競争で優位な立場にありながら農家に制約をかけ、他店に出荷させないようにしたというものでした。

 今回の重複出荷登録者は33名でした。その内、7名いた正組合員を除き、26名の「組合員外の方々」に、どうぞ出荷は自由ですから他店に出して下さいと申し上げました。但し、近場の直販所で同じものが売られていたのでは、木の花ガルテンとして今まで築き上げてきたブランド力や魅力は無くなるので、その場合は、私共への出荷はご遠慮下さい、ということだったのです。

 この件では、定例、又臨時の理事会を幾度となく開催して慎重に審議を重ねて対応を進めてきましたが、結論は出せなかったのです。又実行もしていないのです。難しい問題でした。

 今回の排除措置命令は、組合長一人の責任ではないと全役員で慰留に努めたのですが、本人の意志は堅くやむを得ず退任を承認し、後任に不肖、私が4月1日付で選任され、その任に就いているところです。

浅学菲才、もとより微力ではありますが、精一杯地域農業の発展に最善の努力をいたしたいと存じます。組合員皆様のご指導とご協力を賜りますよう節にお願い申し上げます。

 大山農業が今日あるのは、昭和36年よりはじまりましたNPC運動(働く、学ぶ、愛し合う)の確固たる基本理念が継承されてきたからであると思っています。

その理念が継承されなくなったとき、時勢は失われ衰退していくものと存じます。

 組合員皆様ともう一度、理念や夢を語り豊かな大山を築き、次世代に引継いでいきたいものです。


 
 
 
 
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