『農協の存続と大山』

2006年10月、組合長職を受け継いだ時、役職以上にこのエッセイを書く事に重圧を感じた。しかし、逃れられない事を悟り又、自分の文才のなさを認め平々凡々と自分の考えをしたためる事に徹した。

先ず、農協の経営内容が判るにつれ、農産物委託販売の手数料は、指導係の人件費で赤字となる事がすぐに理解出来た。大山農協たるゆえんは他の農協にない事業、即ち「キノコ事業」であり新開の「加工事業及び外商部」、そして「木の花ガルテン事業」の3つの経済事業部門である。

大きな利益を上げていた「キノコ事業」や「加工事業」は赤字間近であり、かつての面影は全くなかった。唯一黒字の「木の花ガルテン事業」は、このまま推移すると数年で赤字になるのは目に見えている。悪戦苦闘が始まった。幹部職員に危機を訴えても大平の世に慣れきった過去の体験を持つ彼等には、私の気持ちがなかなか通じない。真剣に私は焦った。ストレスの塊となった私は遂に胃に穴が開き死の直前をさまよった。

この間、私が組合長責を担う真の役割とは何だろうと自問自答した。その結論はこうだ。

人間の命は「絶対」に100歳かそこらで朽ちるが、農協という組織は永遠に永らえなければ弱い農家が困る。組織の存続の為には、新しい血、即ち次々と優秀な人材を組織の中に育てる事であると思い至った。

しかし、この4年間私の願いは道半ばである。人材は育て得るものか、否自ずから育つものか私には解らない。切ない思いがする。

1.キノコ事業では、見通しのつかない椎茸の農家用培養から勇気ある撤退をした。えのき茸部門では、多収穫の大瓶に切り替え、国内2番目に液体接種に取り組み経営改善に取組んだ。

しかし、これ等は根本的な改革からは程遠い一時的な「カンフル注射」にすぎない。

2.加工事業は、際限なく落ち込んでいく売上げを食い止め、新しい取り組みをして黒字を回復したが、一時しのぎにすぎない。近代的加工事業に生まれ変わる為には、技術力の強化、新規商品開発力の抜本的対策が急務である。

3.木の花ガルテン事業は、日本全国の直販モデルとなった元祖だが、後発組の追い上げが凄まじい。発展していく為には、日々新たな発想が求められる。順調に推移していた事業が、ある時を境にして突如として客足が遠のき、売上げが激減してしまうという恐怖を私は何度も体験した。

だから、木の花ガルテンの経営は恐ろしい、油断してはならない。

事業としてのライフサイクルが、15年と思って経営してきたキノコ栽培の事業も約40年生き永えた。この間、幾度となく地獄の体験をし立て直してきた。だからこそ、その思いを農協職員にさせてはならないという思いで、厳しい事を言ってきた。お許しを頂きたい。

 最後に、大山町農協が存続する為の私の思いを 認 ( したた ) める。

1.役員や職員が常に「変化する事に抵抗感」を持たない事。

2.「5年後を支えるのは新規事業であり、10年後を支えるのは人」である。

3.農協存続の担保は、「農家組合員にとって有益であり、且つ社会にとって有益」である事。

 そして経営者として最も大事な事は、今やっている事業で「もし、現在その事業をやっていなかったとしたら、今あえてその事業を新規に始めるか」という事である。もし、否であるのなら即座に撤退する勇気があるかどうかであろう。

 この4年間、大した仕事が出来なかった事を反省して、台湾の作家 金美齢さんの言葉を思い出す。「沢山の仕事をすれば沢山のミスをする 少しの仕事をすれば少しのミスをする 何もしなければミスもしない」さて、この4年間の私の仕事はいずれに該当するだろうか、歴史の裁断に委ねよう。


 
 
 
 
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